AIでLINEスタンプを作る完全ガイド:ゼロから販売までの実践フローと収益のリアル
ChatGPTを使えば数秒でかわいいスタンプキャラクターを生成でき、LINE Creators Marketへの申請手順も難しくない。「AIでスタンプを作って不労所得」— 響きは最高だが、「作れること」と「稼げること」はまったく別の話だ。
世界で750万人以上のクリエイターがこのプラットフォームで競争しており、あなたの取り分は販売価格のわずか35%。さらにAI生成のスタンプにはプラットフォームが自動でラベルを付ける。こうした多くの解説記事が触れない事実こそ、手を動かす前に最も知っておくべきことだ。
このガイドは作り方だけでなく、投じる価値があるかどうかの判断材料も提供する。
TL;DR
- ChatGPT / Midjourneyでスタンプ画像は素早く作れるが、生成後に背景透過・レイアウト・サイズ調整などの工程がある
- LINEはAIスタンプの販売を認めているが、AIラベルが自動表示され、既存IPの侵害は禁止
- クリエイターの実質分配率は販売価格の約35%(1セット¥120のスタンプで手取り約¥42)
- 小規模クリエイターのリアルな収益例:14ヶ月で4,000セット販売 ≈ 約¥96,000、「不労所得」には程遠い
- 「面白いAI実験」として捉え、「収入源」と期待しなければ、ずっと健全に楽しめる
まず数字を見よう — AIスタンプで本当に不労所得は得られるのか?
ツールの使い方を覚える前に、はっきりさせるべき問いがある:LINEスタンプ販売で一体いくら稼げるのか?
収益分配の構造を分解する
LINEスタンプの分配は「1セット売れたらその金額がもらえる」という単純な仕組みではない。二重の手数料が発生する:
- Apple / Googleがまず30%を徴収(アプリ内課金経由の場合)
- LINEが残額からさらに50%を徴収
つまり、1セット¥120のスタンプの場合:
¥120(販売価格)
→ Apple/Google 30%差引 = 残り¥84
→ LINE 50%差引 = 残り¥42
→ あなたの手取り:¥42(販売価格の約35%)
注意:消費者がLINE STOREウェブ版(アプリ内課金ではなく)から購入した場合、Apple/Googleの手数料がかからず分配率は上がる。ただし大多数の購入はアプリ内で行われている。
収入シミュレーション
| 販売セット数 | ¥120 × 35% | あなたの収入 |
|---|---|---|
| 100セット | ¥42 × 100 | ¥4,200 |
| 500セット | ¥42 × 500 | ¥21,000 |
| 1,000セット | ¥42 × 1,000 | ¥42,000 |
| 5,000セット | ¥42 × 5,000 | ¥210,000 |
実際の事例:あるクリエイターが14ヶ月で約4,000セットを販売し、実際の入金額は約¥96,000だった。これは何を意味するか?月平均約¥6,800 — ちょっと良いディナー1回分程度だ。
市場のリアル
- 世界で750万人以上の登録クリエイター(2024年LINE Creators Market 10周年データ)
- 日本だけでも膨大な数のクリエイターが参入
- 累計売上1億円を超えたクリエイターはわずか198人(2022年LINE 8周年データ)
- 収益はトップに極端に集中しており、大多数のクリエイターの収入はほぼゼロ
現実的なアドバイス:「不労所得」が動機なら、LINEスタンプでその期待に応えるのはほぼ不可能だ。しかし「楽しい・AIツールを学べる・ついでにお小遣いになればラッキー」という動機なら、挑戦する価値はある。心構えが体験を決める。
5ステップ完全ワークフロー — AI画像生成からLINE販売まで
Step 1:キャラクターデザインとプロンプト設計
AIスタンプ最大の課題は「1枚の画像を生成する」ことではなく、「スタイルが統一された8〜40枚を生成する」ことだ。
ChatGPT(GPT-4o)— 初心者に最適
GPT-4oは透明背景のPNGを直接生成でき、対話形式でキャラクターを段階的に調整できる。実際に使ってみて最大の利点はキャラクターの一貫性だと感じた。同じ会話内で同一キャラの異なる表情を生成し続ける場合、GPT-4oの安定性はMidjourneyより明らかに優れており、初心者にとっては修正の手間が大幅に省ける。
プロンプト例:
LINEスタンプ用のキャラクターをデザインしてください:スーツを着た柴犬のサラリーマン。
スタイル:シンプルな手描き風の線画、デフォルメ、白背景。
以下の8つの表情・ポーズを生成してください。キャラクターの外見は統一してください:
1. 笑顔で挨拶 2. 応援・ガンバレ 3. 疲れてデスクに突っ伏す
4. 驚き 5. いいね(サムズアップ) 6. 怒り(かわいい版)
7. 泣き 8. ありがとう
各画像は透明背景、正方形比率で。
Midjourney — ユニークなスタイルを追求したい人向け
画質とスタイルの多様性はChatGPTより優れるが、キャラクターの一貫性が弱点だ。--cref(character reference)パラメータで一貫性を保つ必要があり、学習コストは高め。
無料の代替ツール
まず試してみたいだけなら:Microsoft Designer(無料)、Adobe Firefly(無料枠あり)でも十分なクオリティのスタンプ風画像を生成できるが、キャラクターの一貫性と背景制御はやや弱い。
Step 2:背景透過と画像処理
LINEスタンプはPNG形式 + 透明背景が必須。プロンプトで透明背景を指定しても、AI生成画像にはうっすら背景が残ることがある。
無料の背景透過ツール
- Canva(無料版):背景透過機能を内蔵、直感的な操作で一括処理にも対応
- remove.bg:ワンクリックで高品質な背景透過が可能。ただし無料版はダウンロード解像度が低い(625x400px)、高画質は有料
- PhotoRoom:スマホアプリで手軽に背景透過
💡 ヒント:ChatGPT GPT-4oで画像を生成する場合、プロンプトに「transparent background, sticker style」と指定すれば、多くの場合そのまま透明背景のPNGが得られ、背景透過の工程を省ける。
Step 3:レイアウトとサイズ調整
LINEスタンプには厳格なサイズ規定がある:
| 項目 | サイズ | 説明 |
|---|---|---|
| メイン画像(Main) | 240 × 240 px | スタンプショップの代表画像 |
| スタンプ(Sticker) | 最大 370 × 320 px | 幅・高さは偶数、四辺に10pxの透明マージンが必要 |
| タブ画像(Tab) | 96 × 74 px | チャット画面でスタンプを選ぶ際の小さいアイコン |
個数の選択戦略
8、16、24、32、40個から選択可能(8の倍数が必須)。初心者はまず8個から始めるのがおすすめ — ハードルが最も低く、フローを素早く検証できる。反応を見てから個数を増やしたり続編をリリースすればいい。
CanvaやFigmaで対応サイズのテンプレートを作り、背景透過済みの画像を配置、マージンを確認してPNGで書き出す。
Step 4:LINE Creators Marketに申請する
- アカウント登録:LINE Creators Market にLINEアカウントでログインし、無料登録
- スタンプを新規作成:「新規登録」→「スタンプ」を選択し、メイン画像・タブ画像・全スタンプ画像をアップロード
- 情報を入力:
- スタンプ名(日本語 + 英語)
- 説明文
- タグ — これが検索露出に直結するSEOの要
- AI使用の申告:AIツールを使用した場合、「AIを使用」オプションにチェックを入れる必要がある。LINEが購入ページにAIラベルを自動表示する
- 販売エリアと価格を選択:最低¥120
- 審査に提出
Step 5:審査とリジェクト対応
審査は通常数時間〜2日で完了する。よくあるリジェクト理由:
- 画像品質の問題:ぼやけ、エッジが粗い、透明背景の処理が不完全
- 内容の重複:8個のスタンプの構図や表情が似すぎている
- 不適切なコンテンツ:暴力、差別、政治的要素
- 著作権の懸念:キャラクターが有名IPに酷似している
リジェクトされても慌てる必要はない。修正して再提出すればいい。LINEは具体的なリジェクト理由を通知してくれる。
AIスタンプ制作ツール比較
| ツール | 強み | 弱み | 適したシーン | 月額 |
|---|---|---|---|---|
| ChatGPT(GPT-4o) | 対話型操作、キャラ一貫性が高い、透明背景対応 | スタイルの選択肢が少なめ | 初心者に最適、スピード重視 | $20 |
| Midjourney | スタイル多彩、高画質 | キャラ一貫性が弱い、プロンプト技術の習得が必要 | ユニークなビジュアルを追求 | $10〜 |
| Microsoft Designer | 無料、操作が簡単 | 品質が不安定、一貫性に欠ける | お試し、ゼロコスト検証 | 無料 |
| Adobe Firefly | 商用利用が安全(学習データがライセンス済み) | 無料枠に制限あり | 著作権リスクを気にするクリエイター | 無料/有料 |
現実的な選択:すでにChatGPT Plusを契約しているなら、そのままGPT-4oを使えばいい。追加費用は不要だ。キャラクターの一貫性と操作の手軽さで、初心者には最も使いやすい。
勝率を上げる実戦戦略
750万人のクリエイターの中で目立つのは簡単ではないが、露出を高めるいくつかの方法がある:
1. ニッチを選ぶ
「かわいい猫」「かわいい犬」のようなレッドオーシャンは避ける。例えば:
- 職場あるある(「会議中の本音」「退勤カウントダウン」)
- 日本のローカル文化(関西弁、季節行事、花見・忘年会ネタ)
- 特定コミュニティのスラング(エンジニアあるある、医療従事者あるある)
- カップル・夫婦の日常(永遠に需要がある)
2. タイトルとタグのSEO
スタンプのタイトルとタグは検索結果に直結する。LINEスタンプショップの人気検索ワードをリサーチし、キーワードを自然にタイトルとタグに組み込もう。
3. 量産戦略
8個1セットのスタンプ1つで爆発的に売れることはまずない。より現実的なのは、同じキャラクターで複数セットをリリースする(「柴犬サラリーマン Vol.1」「Vol.2」...)ことで、キャラクターの認知度を築く方法だ。AIツールのおかげで量産コストは極めて低い。
4. SNSでの発信
出品したら放置、では売れない。Instagram、X(旧Twitter)、TikTokなどでスタンプや制作過程を発信しよう。「AIで作ったスタンプ」というだけで話題性のあるコンテンツになる。
リスク開示と注意事項
AIラベルの影響
LINEはAI生成スタンプの購入ページにAIラベルを自動表示し、AI生成かどうかを独自に判定する権利を保持している。現時点でAIラベルが売上に与える具体的な影響を示す公開データはないが、消費者の購買意欲が下がる可能性はある — 特に市場に「手描き感」のあるスタンプが豊富にある場合はなおさらだ。
著作権と知的財産権のリスク
LINE審査ガイドラインは第三者の知的財産権侵害を明確に禁止しており、アニメキャラクター、有名人の肖像、ブランド商標などの使用が含まれる。AI画像生成時に「ジブリ風」「ディズニーキャラクター」といった著作権侵害につながりかねないプロンプトは避けるべきだ。
また、純粋にAIプロンプトだけで生成した画像は、米国では現在著作権保護の対象外とされている。つまり理論上、あなたのスタンプは他人にコピーされても権利を主張できない可能性がある。画像に十分な人間の創造的な加工(色の塗り直し、手描き要素の追加など)を施せば、保護される可能性はある。各国のスタンスはまだ流動的だ。
サンクコスト(埋没費用)のリスク
- ChatGPT Plus月額 $20(約¥3,000)
- 毎月の制作・宣伝に費やす時間
- 期待される収入がゼロの可能性
3ヶ月間で約¥9,000のツール費用と数十時間を投じて、稼ぎが¥2,000だけだったら — それは赤字の投資だ。始める前に自分に正直になろう:楽しむためか、稼ぐためか?
市場の極度な飽和
750万人のクリエイターが限られたアテンションを奪い合っている。新しいスタンプは出品後の露出期間が非常に短く、外部からの宣伝なしに自然に発見されることはほぼ不可能だ。LINEの検索・レコメンドアルゴリズムは、すでに売上実績のある人気スタンプを圧倒的に優遇する。
プラットフォームのポリシー変更
LINEはAIスタンプのポリシー、分配率、審査基準をいつでも変更する可能性がある。2015年2月以降、LINEはApple/Googleの30%プラットフォーム手数料をクリエイターに代わって負担することをやめ、クリエイターの実質取り分は販売価格の50%から約35%に低下した。プラットフォームのルールは予告なく変わりうる。一つのプラットフォームにすべてを賭けるのはリスクがある。
FAQ
AIスタンプをLINEに出品するのに費用はかかりますか?
かかりません。LINE Creators Marketの登録・出品は完全無料で、LINEアカウントがあればOKです。唯一の費用はAIツール(ChatGPT Plus $20/月など)ですが、無料の代替ツールもあるのでゼロコストで試せます。
1セットのスタンプを作って販売開始するまでどのくらいかかりますか?
慣れれば8個1セットを約2〜4時間で完成できます(画像生成、背景透過、レイアウト、申請込み)。初めての場合はフローの把握やプロンプトの試行錯誤があるため、半日ほどかかるかもしれません。審査は通常数時間〜2日です。
AIスタンプはLINE以外のプラットフォームでも使えますか?
生成した画像自体は自由に使えますが、LINE Creators Marketに申請したスタンプ形式はLINE専用です。WhatsApp StickersやTelegram Stickersにも展開したい場合は、別途フォーマット調整と申請手続きが必要です。
日本語だけで出品できますか?
はい、できます。LINE Creators Marketは日本語に完全対応しており、スタンプ名や説明文も日本語で入力可能です。ただし、LINEスタンプはグローバルに販売できるため、英語のタイトルも併記しておくとより多くの潜在ユーザーにリーチできます。
LINEスタンプの収入は確定申告が必要ですか?
必要です。日本ではLINEスタンプの収入は「雑所得」に分類され、給与所得者の場合は年間20万円を超えると確定申告が必要です。ただし多くの小規模クリエイターの収入は非常に少額のため、実際の税負担はほとんどないケースが大半です。LINEからの送金記録は保管しておきましょう。累計1,000円以上で送金申請が可能です。
まとめ
AIによって「スタンプを作る」ハードルはほぼゼロになった — ChatGPTなら数秒でキャラクターが生まれ、8個1セットのスタンプが2〜3時間で完成することもある。しかし「スタンプで稼ぐ」ハードルは依然として高い。750万人のクリエイター、35%の分配率、AIラベルの潜在的な影響 — これらの現実はツールが簡単になっても消えない。
目標が「楽しむ + AI画像生成を学ぶ + ついでにお小遣いが入ればラッキー」なら、これは最高の週末プロジェクトだ。その過程でプロンプトエンジニアリング、画像処理、プラットフォーム申請といったスキルが身につく。この経験自体に価値がある。
目標が「安定した不労所得」なら、より現実的な期待値の調整が必要だ — あるいは、もっと投資対効果の高い副業に時間を使うべきかもしれない。
まずは8個1セットのスタンプを作ってみよう。最小限のコストで、自分がこのプロセスを楽しめるか検証する — なぜなら、収益がわずかという現実の中で、「過程を楽しめること」だけが続けられる唯一の理由だから。